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審議会答申

目 次
1 平成13年答申
2 平成24年答申
3 平成24年答申の主旨
 (1)早急な対応を要する規模
 (2)教育上望ましい学校規模から外れる学校
 (3)学校規模適正化に向けた進め方
 (4)学校規模適正化に向けた手順の例示

 東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会は、平成13年3月、平成24年3月に「東京都板橋区立学校の適正規模及び適正配置について」を板橋区教育委員会に答申した。
 以下、平成13年3月「東京都板橋区立学校の適正規模及び適正配置について(答申)」を「平成13年答申」、平成24年3月「東京都板橋区立学校の適正規模及び適正配置について(答申)」を「平成24年答申」という。

1 平成13年答申

板橋区公式ホームページ
  板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会答申
   少子化により、区立小中学校の児童・生徒はピーク時に比べ、約半分に減っています。
  これにより、極端に小規模な学校も現れ、人間関係の固定化による弊害や、教育活動・学
  校運営への影響なども考えられ、学校規模の適正化が求められています。
   これらの課題に対応するため、教育委員会では教育環境の整備および学校教育の充実
  を目的として、平成12年1月に「板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会」を設置し検
  討を行いました。審議の結果、平成13年3月に区立学校の適正規模、適正配置の基本的
  考え方と具体的方策について、答申がまとめられました。
  答申では
  〇区立小中学校の適正規模
   12~18学級
  〇早急な対応を要する規模(過小規模)
   6学級以下で児童・生徒数150人以下
  と示されました。
  答申は下記添付ファイルからダウンロードできます。
  ※ 表、グラフを省略して引用した。
東京都板橋区立学校の適正規模及び
適正配置について
答  申
平成13年3月
東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会
平成13年3月5日
  東京都板橋区教育委員会様
東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会
       会 長  石郷岡 二 郎 
東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置について(答申)
   東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会は、平成12年1月31日に板
  橋区教育委員会から、「東京都板橋区立学校等の適正規模及び適正配置の基本的
  考え方について」及び「東京都板橋区立学校等の適正規模及び適正配置の具体的
  方策について」の諮問をうけ、鋭意審議を行ってきました。
   このたび、諮問事項について考え方をとりまとめたので、「東京都板橋区立学校等適
  正規模及び適正配置審議会条例」第2条第1項の規定に基づき、別紙のとおり答申し
  ます。
目  次
  1 はじめに ………………………………………………………………………………… 1
  2 板橋区立学校の現状 …………………………………………………………………… 2
   (1)人口の推移 ………………………………………………………………………… 2
   (2)児童・生徒数、学級数の推移 …………………………………………………… 3
   (3)学校規模の推移 …………………………………………………………………… 4
  3 学校適正規模についての基本的考え方 ……………………………………………… 7
   (1)学校教育上の視点 ………………………………………………………………… 7
   (2)制度についての考え方 …………………………………………………………… 7
  4 学校規模による特性等 ………………………………………………………………… 8
   (1)学校教育の視点 …………………………………………………………………… 9
   (2)学校運営組織の視点 ……………………………………………………………… 9
  5 板橋区立学校における適正規模 ……………………………………………………… 10
   (1)適正規模 …………………………………………………………………………… 10
   (2)早急な対応を要する規模 ………………………………………………………… 10
  6 学校の適正配置の基本的考え方 ……………………………………………………… 12
   (1)適正配置の目的 …………………………………………………………………… 12
   (2)適正配置の実施にあたり配慮する事項 ………………………………………… 12
  7 学校の適正配置の具体的方策 ………………………………………………………… 13
   (1)適正配置の具体的な方法 ………………………………………………………… 13
   (2)「早急な対応を要する規模の学校」の適正規模の確保に向けた具体的方法 …… 14
  8 今後の課題 ……………………………………………………………………………… 18
  9 区立幼稚園について …………………………………………………………………… 19
  10 おわりに ………………………………………………………………………………… 20
  1 はじめに
   本審議会は「東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会条例」に基づき、
  平成12年1月31日の第1回審議会において、板橋区教育委員会から、以下の諮問を
  受けた。
  (1)東京都板橋区立学校等の適正規模及び適正配置の基本的考え方について
  (2)東京都板橋区立学校等の適正規模及び適正配置の具体的方策について
   諮問にあたり、教育委員会委員長から、「近年の少子化の進行に伴い、板橋区立学
  校の小規模化が進み、保護者その他の関係者から教育委員会に対し、小規模化に
  よる学校教育への影響等について、様々な声が寄せられており、解決が求められる諸
  課題が顕在化してきている。したがって、子どもたちにとって望ましい教育環境を整備
  し、学校教育の充実を図ることを目的に、適正規模及び適正配置について、様々な角
  度から、ご審議いただきたい。」との発言があった。
   本審議会はこの諮問をうけ、今までに14回の審議会を開催し、板橋区立学校等の現
  状と課題、他区の審議会の状況、学校規模による特性、学校適正規模の基準、適正
  配置の考え方、適正配置の具体的方策等について検討を行ってきた。平成12年9月
  に「中間のまとめ」を公表し、その後、広報いたばしへの掲載、公聴会の開催やいたば
  しタウンモニターへのアンケート調査の実施等により、幅広く区民に周知するとともに、
  意見の聴取を行ってきた。
   本審議会は今までの審議を踏まえ、板橋区立学校の適正規模及び適正配置の基
  本的考え方と具体的方策について結論を得たので、ここに答申するものである。
1頁
  2 板橋区立学校の現状
  (1)人口の推移
   板橋区の総人口は、国勢調査によると戦後増加傾向を示してきたが、平成2年の
  518,943人をピークにその後わずかに減少しており、今後もその傾向が続くものと予測
  される。
   また、年少・高齢人口推移と予測をみると、急速に少子高齢化が進行しており、年
  少人口は昭和50年のピーク時と比べると、減少の傾向は顕著であり、今後も子どもの
  数は減少していくものと見込まれる。
2頁
  (2)児童・生徒数、学級数の推移
   板橋区立学校の児童・生徒数は、小学校は昭和56年の42,152人、中学校は昭
  和60年の19,105人をピークに急激な減少を続けており、平成12年5月1日現在の児
  童・生徒数は小学校21,724人、中学校9,962人であり、ピーク時と比較して、小学校は
  51.5%、中学校は52.1%で、半数近くまで減少している。平成11年度の東京都教育
  人口推計によると、平成16年度には小学校21,514人、中学校8,921人に減少すると予
  測されており、この減少傾向は今後も続くものと思われる。
   また、学級数については、小学校ではピーク時の昭和56年の1,131学級から平成
  12年には737学級、中学校ではピーク時の昭和60年の469学級から295学級に減少し
  ており、小学校では65.2%、中学校では62.9%となっている。平成11年度東京都教育
3頁
  人口推計によると、平成16年度には小学校は732学級、中学校は271学級に減少す
  ると予測され、今後も児童・生徒数と同様に減少傾向が続くものと予測される。
  (3)学校規模の推移
   ①1校あたりの学校規模の推移
    1校あたりの学校規模を児童・生徒数でみると、小学校については、ピーク時の
   昭和56年には、1校あたりの平均児童数は750人であったのに対し、平成12年度
   には379人で昭和56年の50.5%に減少している。学校ごとにみると、昭和56年に
   比べてわずかに児童数が増加した学校がある一方で、昭和56年当時と比較して
   13.3%に減少し、著しく規模が縮小した学校もある。
    また、中学校については、ピーク時の昭和60年には1校あたりの平均生徒数が
   792人であったのに対し、平成12年には412人で昭和60年の52.0%となっており、
   小学校と同様に学級規模は半分近くまで縮小している。学校ごとにみると、最も減
   少率の大きかった学校は昭和60年に比べ30.5%に減少したのに対し、最も減少
   率の小さい学校は当時の69.2%であり、学校ごとの減少傾向にはばらつきがあ
   る。
4頁
   ②学校規模のひらきの推移
    児童数の最多校と最小校をみると、小学校については、ピーク時の昭和56年に
   は最多校1,115人に対し最小校386人であり、約2.9倍のひらきであったが、平成
   12年には最多校685人、最小校106人となり、約6.5倍の学校規模のひらきになっ
   ている。
    中学校についても、ピーク時の昭和60年には最多校1,189人に対し最小校468
   人であり、約2.5倍のひらきであったが、平成12年には最多校652人、最小校154人
   となり、約4.2倍の学校規模のひらきになっており、小学校と同様に極端にバラン
   スを欠く状況になっている。
   ③学級数別の学校規模の推移
    学級数別の学校規模の推移をみると、19学級以上の学校は小学校では昭和55
   年の30校から平成12年には4校に、中学校では昭和60年の13校から平成12年に
   はなくなり、大規模な学校は減少している。
    全般的に学校規模の縮小は著しいが、その中で、小学校ではすべての学年が
   1学級(全校で6学級)の学校は、昭和55年にはなかったものが、平成2年に初めて
   1校になり、平成12年には4校になった。一方、中学校について6学級以下の学校
   は、昭和60年にはなかったものが、平成10年に初めて1校になり、平成12年には2
   校になっており、区立小中学校の小規模化が進行している。
5頁
  3 学校適正規模についての基本的考え方
   前節でみたように、児童・生徒数の減少に伴い、板橋区立学校は全体として小規模化
  の傾向にあると言える。また、区立学校間において大規模校と小規模校との学校規模の
  ひらきが大きく、児童・生徒数が激減している学校がある一方、児童・生徒数が増加して
  いる学校や地域もあり、学校や地域ごとにバランスを欠く状況にある。一方、大規模校に
  ついては、18学級を超える学校は見られるものの、極端に過大な規模ではないので、本
  審議会は主に小規模校の現状や特性に焦点をあてて、審議を進めてきた。
   板橋区教育委員会は、学校の教育方針を、「自他の生命を尊重し、自主・自立と社会
  性に富み、勤労と責任を重んじ、自ら考え正しく判断できる力と、たくましく生きる力をも
  ち、徳・知・体の調和のとれた個性豊かで創造性に富む幼児・児童・生徒の育成を目指し
  生涯にわたる学習の基礎を培う学校教育を推進する。」と定めている。
   今日、学校教育には、家庭や地域社会との連携のもとに、集団生活や学習を通じて児
  童・生徒一人ひとりの個性を生かしながら、豊かな人間性や創造力、たくましく生きる力、
  自主性や社会性を育む教育を進めていくことが一層期待されている。
   したがって、少子化問題を抱える区立小中学校の小規模化の現状に鑑み、子どもた
  ちにとって望ましい学校規模を検討し、実効性のある方策を講じることにより、21世紀を担
  う子どもたちのために早急に教育環境の整備を図っていく必要がある。
   本審議会は、諮問の趣旨を踏まえて、板橋区立学校の適正規模を検討するにあたり、
  国の教育改革の動向や、すでに学校の適正規模及び適正配置について検討を行った
  他区の審議会等の検討状況を勘案しながら、以下のような視点から検討を行った。
  (1)学校教育上の視点
   学校の小規模化がもたらす影響を、学習面と生活面から考え、子どもたちの教育
  環境の整備及び学校教育の充実を目指し、学校適正規模について検討を行った。
  (2)制度についての考え方
   学級編制基準や教員配置基準等の現行の制度を前提としつつ、学習面と生活面を
  分けて、教科によっては少人数の学習集団の設定を弾力的に行う等の取組も視野に
  入れながら、検討を進めた。
7頁
  4 学校規模による特性等
   学校の小規模化が、学校教育に及ぼす影響については、教育の現場における子ども
  たちの実態を踏まえて、教育指導面や学校運営面等の視点から審議を行った結果、学
  校規模による特性等について次のような意見に集約された。
  ・ 単学級なり少人数の場合、人間関係が固定化され、少数の子どもの言動が集団に
   影響を与えやすく、例えばいじめをうける子どもの心理的負担が大きく、数年経過し
   た後も記憶が残っており、デメリットを非常に感じている。
  ・ 小規模の学校だと、国や都の基準では専科等の教員の配置が少ない。
  ・ 子どもは小集団が固定化すると、序列等の固定観念に縛られてしまい、授業や遊び
   でも一度かなわないと思ったら6年間引きずることがあるので、異なった集団に属するこ
   とが必要である。
  ・ 単学級でも、四つ五つの複数の集団があると切磋琢磨も生まれるので、10人に近い
   単学級と15、6人の単学級とでは性格が全く異なる。
  ・ 科目によってはクラスの人数を編成変えして、いつも同じ人ではなく様々な人と接点
   を持てるようにしたらどうか。
  ・ これからの学校教育に対応するために、人間関係を固定化せずに学習活動を展開
   できるようにすることも必要である。
  ・ 小規模校でも大規模校でも、子どもたちが学校生活でそれぞれの力を発揮し、お互
   いのよいものを認めあうことは、指導の仕方で育てていくことができる。
  ・ 人との関わりの中で思いやりの心を育てるとか、集団で一緒にする喜びを体験するこ
   とは、学校の役割として大切である。
  ・ 兄弟等が少ないので、異年齢で多くの友達をつくる取組をしている。
  ・ 人間関係が良好でない場合には、クラス替えを期待している児童・生徒もいる。
  ・ 親としては、あまり小規模だと友達が少なくて、集団との関係などがうまく育つかが心
   配なので、なるべく多くの中で育ってほしいと思っている。
   これらの意見を踏まえて、学校規模による小規模校の特性を学校教育及び学校運営
  組織の視点から整理した。
8頁
  (1)学校教育の視点
   ①学習面の特性
   ・ 児童・生徒一人ひとりの個性や特性に応じた教育活動がしやすく、個々の能力や
    適性を伸ばしていきやすい。
   ・ 授業や運動会、文化祭、展覧会、学芸会などの学校行事で、一人ひとりの児童・
    生徒が活躍する場を多く設定できる。反面、参加人数や参加作品などが少なく、プ
    ログラムに限りがあり、児童・生徒の参加回数が多く負担も大きい。
   ・ 学習活動で班編成する場合、児童・生徒が主体的に参加できる班の数が限ら
    れる。
   ②生活面の特性
   ・ クラス替えがなく人間関係が固定化されるので、人との関わりの中で多様なものの
    見方、考え方にふれる機会が少ない。
   ・ 教師が一人ひとりの児童・生徒の特性を把握しやすく、指導が行き届く。反面児
    童・生徒の教師に依存する傾向が強くなりやすく、主体性、自主性や社会性などが
    育ちにくい面がある。
   ・ 児童・生徒がお互いによく知り合え人間関係は深まるが、人間関係が悪化した場
    合には、児童・生徒の心理的負担が大きくなるきらいがある。
   ・ 少人数集団では、人との関わりをもつ場面が多くなく、児童・生徒の間で切磋琢磨
    する機会が少ない。
   ・ 少人数のため、特定の児童・生徒の言動が、集団に与える影響が大きい。
  (2)学校運営組織の視点
   ・ 学校規模にかかわらず学校運営に必要な校務分掌、組織は変わらないので、教
    員の学校運営上の負担が大きい。
   ・ 国や都の基準では、専科等の教員の配置が少なく、学習集団の弾力的な設定が
    しにくい。
   ・ 教師の間で切磋琢磨しながら協力して、研究、研修する機会が少なくなる。
   ・ 教師の人数が少ないため、運動会、文化祭、展覧会、校外学習等の学校行事の
    円滑な運営及び、部活動、クラブ活動等の多様な教育活動の実施にとって障害とな
    る場合もある。
9頁
  5 板橋区立学校における適正規模
   これからの学校教育には、児童・生徒がある程度の規模の集団で、人との関わりの中
  で切磋琢磨して、主体性や社会性、思いやりの心を育てていく役割が強く期待されてい
  る。しかしながら、前節の学校規模による特性でみたように、区立小中学校の小規模化の
  進行に伴い、学校教育の本来の機能が十分に発揮できないことが懸念されている。とく
  に、クラス替えのない単学級や学級運営が難しい少人数学級については、児童・生徒の
  人間関係の固定化による様々な弊害が、指摘されているところであり、区立学校の学校
  規模の適正化に向けて早急な対応が求められる。
   そこで、本区として、区立学校の小規模化の現状と学校規模による特性を踏まえて、区
  立小中学校の適正規模及び早急な対応を要する規模を以下のように設定する。
  (1)適正規模
   小学校については、単学級の解消を図り、クラス替えが可能な1学年複数学級の確保
  を考えて、12学級(1学年2学級)から18学級(1学年3学級)を適正規模とする。
   中学校については、本区では、ほぼ2校の小学校から1校の中学校に進学している状
  況であること、様々な学習活動の推進や進路指導の実施には一定の教職員の確保
  が必要であることを考えて、小学校の各学年の2倍の学級数である12学級(1学年4学
  級)から18学級(1学年6学級)を適正規模とする。
  〇適正規模
   12学級~18学級
  (2)早急な対応を要する規模
   適正規模の基準を下回る学校については、規模の態様に応じて、現状や将来の動向
  を勘案した対応を検討すべきである。
   適正規模を下回る状況であっても、ある程度の学校規模が確保されているならば、
  規模の特性のメリット部分を生かし、教育指導面や学校運営面の工夫や努力によりデメ
  リット部分に対応していくことも考えられるので、学校の取組や児童・生徒の動向を見
  守っていく必要がある。
   しかし、小規模化が著しい場合には、規模の特性のデメリット部分が顕在化して、指
  導面や運営面の工夫、努力だけで対応していくことは、困難であると考える。
10頁
   よって、本審議会としては、適正規模実現に向けて、早急な対応を要する規模とし
  て、小規模校の下限を設けるものである。
   学校規模による特性においてみたように、集団による学習活動の活性化、豊かな人
  間関係の形成や授業の効果的な展開等の面で、十分な教育効果をあげるためには、
  少なくとも1学級20人以上の規模の児童・生徒を確保することが望ましいと考える。
   しかしながら、板橋区立学校の現状をみると、学校規模が120人を下回る場合には、
  20人未満の学級が複数存在し、さらに10人以下の極端に小規模な学級も存在してい
  る。一方、学校規模が150人を上回る場合には、20人未満の学級はほとんど存在してい
  ない状況である。
   したがって、本審議会は区立学校において、集団による教育の活性化を図るうえか
  ら、1学級内に4~5の小グループを形成することができる規模として6学級で150人を上
  回る児童・生徒数が必要であると考え、これを小規模校の下限とする。
  〇早急な対応を要する規模
   6学級以下で、児童・生徒数150人以下
11頁
  6 学校の適正配置の基本的考え方
   学校の適正配置は、前節で明らかにした適正規模の確保を根底において考えなけれ
  ばならない。区立学校の児童・生徒にとって望ましい教育環境を整備し、バランスのとれ
  た学校配置を実現していくためには、将来の児童・生徒数の推計、通学距離、通学路の
  安全確保、学校と地域社会との関わりなどに配慮し、区立学校の適正配置を検討してい
  く必要がある。
   前節では板橋区立学校の現状を踏まえて、区立学校の適正規模を12~18学級、早急
  な対応を要する規模を6学級以下で児童・生徒数150人以下と設定した。したがって、区
  立学校の小規模化に伴う学校教育への影響に鑑み、適正規模を下回り、「早急な対応を
  要する規模の学校」の適正規模の実現に焦点をあてて、適正配置を検討する際の基本
  的な考え方を次のように整理した。
  (1)適正配置の目的
   適正規模を下回り早急な対応を要する規模の学校について、隣接する学校を含め
  検討を行い、学校規模の適正化を図ることにより、集団による学習活動の活性化、豊
  かな人間関係の形成等の面で十分な教育効果が得られるような教育環境を整えること
  を目的とする。
  (2)適正配置の実施にあたり配慮する事項
   適正配置の実施にあたっては、当該校の地域特性を考慮し、保護者や地域住民の
  理解と協力が得られるように努める。また、東京都教育委員会の「教育人口等推計報
  告」による児童・生徒数の将来推計、当該校及び隣接校の施設・設備の状況、通学距
  離、通学路の安全等を十分に考慮して検討を行う。
12頁
  7 学校の適正配置の具体的方策
  (1)適正配置の具体的な方法
   適正配置を実施する場合の具体的な方法として、「通学区域の変更」と「学校の統
  合」が考えられる。
   検討の手順としては、まず隣接校との通学区域の変更について検討を行い、通学区
  域の変更だけでは安定的に適正規模が確保されない場合には、次に学校の統合につ
  いて検討を行っていくものとする。その際には、児童・生徒への影響をできるかぎり少な
  くすること、学校の適正規模を安定的に確保することを考慮に入れて検討すべきであ
  る。
   ①通学区域の変更
     通学区域の変更の検討にあたっては以下の点に留意する必要がある。
   ・通学距離が極端に遠距離にならないよう配慮し、通学距離は、小学校1km、中
    学校1.5km程度以内となるようにする。
   ・踏切や危険箇所の横断等について十分配慮し、通学路の安全確保に努める。
   ・学校と地域社会等との関わりに配慮し、通学区域と地域社会、行政区域、歴史
    的背景や小中学校の学区域の整合性を図るように努める。
     さらに、通学区域の変更の検討にあたっては、就学指定校の変更について、児
    童・生徒の具体的な事情に即した弾力的な対応を行っている実態を考慮する。
   ②学校の統合
     学校を統合する場合の具体的な方法は、複数の学校を廃止し新たな学校を設置
    する「廃止・設置方式」と、1校だけを廃止し既存の学校に児童・生徒を編入する「廃
    止・吸収方式」が考えられる。統合の方式については、当事者の意見を聴取しながら
    合意形成を図る必要があるが、本審議会では教職員の配置や児童・生徒の統合後
    の交流等を考慮すると、「廃止・設置方式」が望ましいと考える。
     また、学校の統合を実施する場合にも通学区域の変更を伴うが、その際には前項と
    同様の配慮が必要である。
   ③その他配慮すべき事項
     適正配置を実施する場合には、当該校の保護者や地域住民に適正配置実施の
    主旨、実施方法等について十分に説明するとともに、保護者や地域住民の参加する
13頁
    協議会等の組織を設置し、関係者の意見を聞きながら進めていく必要がある。
     また、児童・生徒同士が早く打ち解けることができるように、円滑な移行を図り、事
    前交流活動等を実施していくことが望まれる。
     さらに、当該校に心身障害諸学級が設置されている場合には、現に通学している
    児童・生徒への配慮はもちろんのこと、区全体としてバランスのとれた心身障害諸学
    級の配置についても検討すべきである。
  (2)「早急な対応を要する規模の学校」の適正規模の確保に向けた具体的方法
   現在、学校規模が6学級以下で150人以下の早急な対応を要する規模の学校は板
  橋第三小学校と高島第四小学校の2校である。この2校について、適正規模をどのよ
  うに確保していくのか、どのような点について配慮し、検討していくかについて、本審
  議会としての考え方を示すことが、諮問事項への答申になると考える。
   ①板橋第三小学校への対応
     板橋第三小学校に隣接し学校間の距離がおおむね1km以内の小学校は、板橋第
    一小学校、板橋第八小学校、板橋第九小学校、金沢小学校、中根橋小学校、稲荷
    台小学校の6校である。板橋第三小学校及び隣接校の児童数、学級数及び学校間
    の距離は、次のとおりである。また、通学区域の現況は付属資料のとおりである。
14頁
     すでに述べたように、板橋第三小学校の適正規模を確保するためには、通学区域の
    変更による方法と学校の統合による方法について検討する必要がある。
   ア 通学区域の変更
     板橋第一小学校、板橋第八小学校、板橋第九小学校は現在12学級未満で適正
    規模を下回っており、通学区域を変更して各校の児童を板橋第三小学校に編入し
    た場合には、各校ともさらに小規模化することが考えられるので、この3校を通学区
    域の変更の対象にすることは難しい。
     金沢小学校、中根橋小学校、稲荷台小学校が12学級以上の適正規模校である
    ので、通学区域の変更の対象校として考えられる。板橋第三小学校の児童数とそれ
    ぞれの対象校の児童数を合計して、仮に半分に分割した場合でも、両校との平成
    17年度の推計で1校あたりの児童数は300人を下回り、適正規模である12~18学級
    の確保は難しい。また、両校の通学区域を単純に分割することは、前項の「通学区
    域の変更」で示した通学距離、通学路の安全、学校と地域社会との関わり等につい
    て配慮に欠ける方法であり、現実に実施できるものではない。したがって、通学区域
    の変更だけにより、板橋第三小学校の適正規模を確保することは、きわめて困難で
    あるとの正規結論に達した。
   イ 学校の統合
     板橋第三小学校の隣接校の中学校の通学区域、地域との関わり等については、
    次の表のとおりである。
   15頁
     隣接校の状況等を検討した結果、学校間の距離が最も近く、統合後に適正規模
    の確保が可能で、中学校の通学区域が同区域であり、板橋第三小学校から分離し
    た歴史的沿革のある稲荷台小学校との統合が最も望ましいと考える。
     なお、板橋第三小学校には、知的障害学級と難聴・言語障害学級が設置されて
    おり板橋第三小学校の通学区域以外からも児童が通学している。統合にあたって
    は、現在通学している児童や心身障害諸学級の配置に対し、十分な配慮が必要で
    ある。
   ②高島第四小学校への対応
     高島第四小学校に隣接し学校間の距離がおおむね1km以内の小学校は、新河岸
    小学校、蓮根小学校、蓮根第二小学校、高島第六小学校である。また、高島第四小
    学校の通学区域については、平成5年に高島第一小学校及び高島第六小学校と調
    整を行った経緯がある。高島第四小学校及び隣接校の児童数、学級数及び学校間
    の距離は、次の表のとおりである。また、通学区域の現況は付属資料のとおりである。
     すでに述べたように、高島第四小学校の適正規模を確保するためには、通学区
    域の変更による方法と学校の統合による方法について検討する必要がある。
16頁
   ア 通学区域の変更
     高島第四小学校については平成5年に通学区域を変更し、高島第一小学校と
    高島第六小学校の通学区域の一部を編入した。その際に、一時的に高島第四小
    学校の児童数は増加したものの、その後小規模化がさらに進み、結果的に適正規
    模は確保されなかった経緯がある。したがって、通学区域の変更だけにより高島第
    四小学校の適正規模を確保することは困難であるとの結論に達した。
   イ 学校の統合
     高島第四小学校の隣接校の中学校の通学区域、地域との関わり等については、
    次の表のとおりである。
     隣接校の状況等を検討した結果、学校間の距離が最も近く、統合後に適正規模
    の確保が可能で、中学校の通学区域がほぼ同区域であり、同じ出張所地区の高島
    第六小学校との統合が最も望ましいと考える。
     なお、平成5年の通学区域調整の経緯を踏まえ、通学距離が極端に遠距離にな
    る地域については配慮を要する。
   以上のように、本審議会としては、あくまでも早急な対応を要する規模の学校の適正
  規模の確保の見地から、学校間の距離、小・中学校の通学区域、地域との関わり、学校
  施設・設備の状況等について検討し、適正配置の具体的方策についての考え方を取り
  まとめた。
17頁
  8 今後の課題
   前節で早急な対応を要する規模の学校について検討を行ってきたが、今後とも少子
  化により子どもの数はさらに減少していくと見込まれ、これに伴い、児童・生徒数も減少
  し、区立小中学校の小規模化がさらに進むことが予測される。今後、早急な対応を要す
  る規模の基準を下回ったり、下回ることが確実に予測される学校が新たに出現した場合
  には、当該校や隣接校の配置状況を総合的に勘案し、この答申で示した考え方に基づ
  き適正規模の確保に向けた具体的な方策を検討し、適正配置を実施していく必要があ
  る。
   また、早急な対応を要する規模は上回っているが、適正規模の基準を下回っている学
  校については動向を見守っていく必要がある。
18頁
  9 区立幼稚園について
   現在、区立幼稚園は、高島幼稚園と新河岸幼稚園の2園である。両園とも定員に対
  する園児数や入園予定者数の割合は、ほぼ100%近くであり、園児数からみると早急な
  対応が必要とされる状況には至っていない。今後、少子化に伴う子どもの数の減少によ
  り、園児数が極端に減少し、幼児教育に支障が生じる場合には、区立小中学校と同様
  の対応を検討する必要がある。
19頁
  10 おわりに
   本審議会は、児童・生徒数が減少している板橋区の現状を踏まえ、学校の小規模化が
  もたらす児童・生徒への影響を、教育上の観点から検討し、区立学校のより良い教育環
  境の整備や教育効果の向上を図ることを念頭において、学校の適正規模、適正配置に
  ついて慎重に審議を進めてきた。この答申は、14回におよぶ審議の過程で、板橋区立
  学校の適正規模及び適正配置について、おおよその意見の一致がみられたものをとりま
  とめたものである。
   審議の過程では、小規模校の教育実践を評価する意見、現行の学級編制基準につい
  ての意見、限られた予算の中での教育環境の充実など、様々な角度からの意見がださ
  れ、活発な議論がなされた。
   今後は、板橋区教育委員会がこの答申の趣旨を踏まえ、関係者の意見を十分に聴取
  し協議を行うなど、板橋区立学校の適正規模の円滑な実現に向けて、具体的な対応を
  進めていくことを強く期待する。
   なお、平成12年1月の発足以来本審議会の会長でった真野宮雄氏が、平成13年
  1月の審議半ばにしてご逝去された。真野前会長のご功績に対し感謝申し上げるととも
  に、謹んでご冥福をお祈りするものである。
   最後に、本答申の趣旨に沿い、子どもたちにとって区立学校の教育環境がさらに整備
  され、学校教育の一層の充実が図られることを願うものである。
20頁

2 平成24年答申

板橋区公式ホームページ
  平成24年3月板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会答申
   教育委員会は、学校を取り巻く環境の変化による課題に対応するため、区立学校適正
  規模及び適正配置審議会へ区立学校の適正規模及び適正配置における基本的な考え
  方と具体的な方策について諮問し、答申書がまとめられましたので公表します。
  答申は下記添付ファイルからご覧いただけます。
  ※ 表、グラフを省略して引用した。
東京都板橋区立学校の適正規模
及び適正配置について(答申)
平成24年3月
東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会
平成24年3月2日
  板橋区教育委員会 様
東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会
       会 長  渡 部 邦 雄
東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置について(答申)
   東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会は、平成22年1月13日に
  板橋区教育委員会から「東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置の基本的な考
  え方について」及び「東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置の具体的な方策
  について」の諮問を受け、鋭意審議を行ってきました。
   このたび、諮問事項について取りまとめましたので別紙のとおり答申します。
目  次
  1 はじめに(審議会の基本的な考え方) …………………………………………… 1
  2 これまでの適正規模・適正配置に対する取り組み ……………………………… 3
   (1)学校の規模 ……………………………………………………………………… 3
   (2)学校の適正規模への具体的な取り組み ……………………………………… 3
  3 本答申の視点 ………………………………………………………………………… 4
  4 学校規模から考える望ましい教育環境 …………………………………………… 5
   (1)小学校 …………………………………………………………………………… 6
   (2)中学校 …………………………………………………………………………… 6
  5 適正配置を検討するうえで考慮すべき事項 ……………………………………… 7
   (1)地域と学校の連携 ……………………………………………………………… 7
   (2)通学区域 ………………………………………………………………………… 7
   (3)保幼小中連携教育の推進 ……………………………………………………… 8
   (4)特別支援教育 …………………………………………………………………… 8
   (5)学校の大規模化 ………………………………………………………………… 8
   (6)大規模集合住宅の影響 ………………………………………………………… 8
   (7)学校改築 ………………………………………………………………………… 8
  6 適正化に向けた進め方 ……………………………………………………………… 9
   (1)教育上望ましい規模を下回る場合 …………………………………………… 9
   (2)教育上望ましい規模を上回る場合 …………………………………………… 11
  7 おわりに ……………………………………………………………………………… 13
  1 はじめに
   〔審議会の基本的な考え方〕
  〇学校の教育環境は様々な条件により総合的に整えられるものであり、学校の規模及び
   配置の適正化を図ることは、子どもの成長にとって望ましい教育環境を構成する大事な
   要件である。
  〇各学校は規模に応じた教育の充実に取り組んでおり、審議会の導き出した望ましい規
   模を下回ること、あるいは上回ることが直ちに望ましくない教育環境にあるとは断定
   できない。
  〇適正化にあたっては学校、保護者、地域関係者による協議体において十分な合意形成
   を図るとともに教育委員会による適切な情報提供や広報活動等が必要である。
   本審議会は、平成22年1月13日に板橋区教育委員会より板橋区立学校の適正規模及
  び適正配置における基本的な考え方及び具体的方策について諮問を受け、審議を重ねて
  きた。
   学校の適正規模及び適正配置に関して、これまで区では、平成13年3月の「東京都板
  橋区立学校の適正規模及び適正配置について(答申)(以下「平成13年答申」という。)
  に基づき、通学区域の変更と学校統廃合の実施〔後掲〕によって学校の規模及び配置の
  適正化に取り組んできた。
   平成13年答申からほぼ10年が経過し、子どもを取り巻く教育環境は大きく変化して
  いる。教育基本法をはじめとする関係法令の改正や学習指導要領の改訂は、子どもに「生
  きる力」を育成するための教育内容の改善と教育条件の整備を求めている。一方、教員
  においては団塊世代の大量退職に伴う急激な世代交代が進んでおり、指導力の維持・向
  上を図るための教員の育成が課題となっている。また、防災上の役割を含めた学校と地
  域の新たな関係の構築も期待されている。
   これらの課題に対応するために、区では保幼小中連携、学校選択制、特別支援学級増
  設等の施策や「いたばしの教育ビジョン」を具体化した「あいキッズ」や学校支援地域
  本部等の事業を推進しているが、今後とも家庭・学校・地域が一体となって子どもの成
  長を支える環境づくりを進めることが重要である。
   こうした観点から、本審議会は、学校の規模や配置の適正化を図ることも望ましい教
  育環境を構成する大事な要件であるとして、区が今後とるべき基本的考え方及び具体的
  方策を答申としてまとめた。過小規模へ進む学校と過大規模へ進む学校の二極化が進行
  する区の現状において、学校の適正規模及び適正配置のあり方を問い直し、適切な方策
1頁
  を講じることの必要性はきわめて大きいと言える。
   答申では、教育上望ましい学校規模についても明らかにしている。これについては、
  次のことを確認しておきたい。
   現在の区立学校の中には、この望ましい規模から外れる学校が存在するが、学校の教
  育環境は様々な条件により総合的に整えられるものであり、各学校ではそれぞれの規模
  に応じた教育の充実に取り組んでいる。したがって、規模を外れることが直ちに望まし
  くない環境にあるとは断定できないということである。
   このことを確認したうえで、規模の適正化を図る具体的方策については、望ましい規
  模を大きく下回る場合には当該学校に関わる保護者や地域、関係団体等による協議体に
  おいて学校の方向性を十分に検討し、決定することが望ましいとした。一方、望ましい
  規模を上回る場合には児童・生徒数の的確な推移予測と施設等の状況把握を前提として、
  通学区域の調整や施設設備の検討が必要であるとした。
   教育委員会においては、児童・生徒や保護者の不安を緩和するための配慮も必要であ
  り、学校規模が及ぼす教育上の利点や課題のほか、教育環境の充実のための取り組みな
  どを適切に情報提供していくことが不可欠である。
2頁
  2 これまでの適正規模・適正配置に対する取り組み(平成13年答申)
  (1)学校の規模
   小規模化が学校教育に及ぼす影響について整理し、学習面や生活面等から、望まし
  い教育環境を維持するには一定の規模が必要であると結論付けた。
   ア 適正規模         12学級から18学級
   イ 早急な対応を要する規模  6学級以下で児童・生徒数150人以下
    ※早急な対応を要する規模の学校は早期に統廃合を含めた対応について検討を要
     するとした。
  (2)学校の適正規模への具体的な取り組み
   答申に基づき、早急な対応を要する規模の学校の適正規模化を実施した。
   ア 小学校     57校から53校に統廃合
   イ 中学校     24校から23校に統廃合
   ウ 通学区域変更  小学校1校
3頁
  3 本答申の視点
   〔諮問事項に対する視点〕
   学習指導要領が重視する「生きる力」を育成するための教育環境の整備
   改正教育基本法や学校教育法の一部改正によって明確に示された教育の基本理念は、
  学習指導要領が重視する「生きる力」の育成にほかならない。「生きる力」については、
  その内容や必要性を教育関係者や保護者、社会の間で共有し、共同して育成に当たるこ
  とが課題となっている、
   本審議会は、こうした時代の要請を踏まえ、諮問事項に対する本答申の視点を「生き
  る力」を育成するための教育環境の整備とし、その視点から学校の規模や配置のあり方
  を検討することとした。
4頁
  4 学校規模から考える望ましい教育環境
   〔教育上望ましい規模〕
  〇小学校 12学級から18学級(1学級あたり20人から30人)
  〇中学校 12学級から15学級(1学級あたり30人から35人)
   望ましい規模の学校においては、子どもたちが多様な人間関係の中で社会性や個性を
  伸長し豊かな人間性の基礎を培い、学力や体力を一層向上させるだけでなく、学校運営、
  教員の資質向上等の面でも様々な良さが発揮される
   学校の教育環境は人的・物的両面にわたる様々な条件により総合的に整えられるも
  のである。とりわけ学校や学級の規模は、子どもにとって生活面、学習面だけでなく
  心理面にも大きな影響を及ぼす教育環境である。
   そこで本審議会は、小規模校や大規模校が抱える問題点を整理しながら、教育上望
  ましい学校規模について考察することにした。
   学校の適正な規模については、学校や地域の実情、子どもや保護者のニーズ等によ
  る多様な考え方があるが、「生きる力」を育成する教育環境や教育条件の整備を進める
  観点から、区として教育上望ましい規模を設定しておくことは必要なことであると考
  える。
   そのため、学級規模については、例えば、いじめなど生活指導面での課題の複雑化、
  多様化により児童生徒に対する個別の対応の重要性が増したこと、教育活動を支える
  基盤である学級経営を確立する必要があること、学習指導要領で示す学習活動、言語
  活動、体験活動の充実を図ることなどに考慮した。
   また、教育上望ましい規模の学校では、教職員の配置やクラス替えによる多くの教
  職員や仲間とのふれあいを通して、学習活動が展開されるなどの利点が考えられる。
   以上のような観点を踏まえるとともに、審議会委員の経験知等を結集し、以下の規
  模を導き出した。
   教育上望ましい規模
  小学校 12学級から18学級(1学級あたり20人から30人)
  中学校 12学級から15学級(1学級あたり30人から35人)
   望ましい規模の学校においては、人間関係、教育活動、学校運営、教員の資質
  向上等に関して、次のような特性やよさを発揮することが考えられる。
5頁
  (1)小学校
   児童は、多様な人間関係の中で互いに切磋琢磨して、学力や体力の向上に意欲
  的に取り組むようになる。また、学年進行に伴う学級編制替えを経験することは、
  多くの友人との信頼関係を築く喜びや自己有用感(※注1)を体得させ、社会性
  や豊かな人間性の基礎を培うことになる。
   学校運営においては、学年に複数の教員が配置される利点を生かし、多面的な
  児童理解や協力的な指導が行いやすくなる。また、校務分掌に若手教員とベテラ
  ン教員をバランスよく配置することができ、相互にかかわり合うことによって教
  員としての資質や実践的な指導力の向上に組織として取り組めるようになる。さ
  らに、校務を分担し合うことで効率的な学校運営が図られ、子どもと向き合う時
  間や授業のための準備の時間も確保しやすくなる。
  (2)中学校
   生徒は、心身の成長発達に伴い、多様な集団の中における自己の位置づけの確
  認や行動規範の体得によって社会性や個性を伸長するとともに、学力の一層の向
  上を図ることができるようになる。また、教科指導にとどまらず、特別活動や部
  活動等の充実によって様々な活動を経験し、知・徳・体の調和のとれた発達を促
  すことができる。
   学校運営においては、全教科に正規教員が配置される利点から、質の高い授業
  が展開されるととも生徒の学習や生活をきめ細かく見ることができる。さらに、
  生活指導や部活動等に多くの教員があたる体制をとることが可能になる。また、
  教科担任が複数いる学校においては、指導内容や指導方法を日常的に交流するこ
  とが可能になり、学校や生徒の実態に即した教育活動が展開されるとともに、研
  修し合う教員どおしの授業力の向上に取り組むことができる。
6頁
  5 適正配置を検討するうえで考慮すべき事項
  〇学校や地域が抱える固有の事情や課題に十分留意して検討を進めることが重要
   〔考慮すべき事項〕
  (1)地域と学校の連携 (2)通学区域 (3)保幼小中連携教育の推進 (4)特別支援教育
  (5)学校の大規模化 (6)大規模集合住宅の影響 (7)学校改築
   学校の適正配置の問題は、学校や地域が抱える固有の事情や課題に十分に留意して検
  討を進めることが重要である。
   審議会では、様々な観点からパターンの異なる特徴的な学校や地域を抽出し、適正
  配置を検討するうえで考慮すべき事項を明らかにした。適正化の検討に際しては、以
  下に示した7つの視点を参考に、学校や地域の実情に即した有効な方策を導き出して
  いくことが望ましい。
  (1)地域と学校の連携
   地域の方々による学校支援活動は広がりを続けている。これまでの青少年健全育
  成地区委員会活動やいきいき寺子屋プラン事業に代表される様々な活動を通した地
  域と学校の連携が行われており、さらには「あいキッズ」や学校支援地域本部も着
  実に推進している。「いたばしの教育ビジョン」では「いきいき子ども!あたたか家
  族!はつらつ先生!地域が支える板橋の教育」というキャッチフレーズを掲げ、家
  庭、学校、地域、教育委員会が連携・協同することをめざす方向としている。
   適正配置を検討するうえでは、地域と学校の連携が進むような視点が必要である。
  (2)通学区域
   地域との関係においては、通学区域が町会・自治会区域と一致していない部分が
  ある。これは、町会・自治会区域が歴史的経過から形成されたこと、通学区域は急
  増する児童・生徒数に対応するために学校を増設してきた際に学校規模に合わせて
  設定してきた経緯に起因している。通学区域変更は主に適正規模の確保の手段とし
  て用いられてきたが、適正配置の観点から変更を検討することも必要である。検討
  する際には、通学距離、安全性、学校規模を考慮するとともに、地域の教育力を生
  かす観点から町会・自治会の区域との整合に配慮する必要がある。
7頁
  (3)保幼小中連携教育の推進
   いわゆる小1プロブレムや中1ギャップ等の教育課題を解決するために、保幼小
  中連携教育を推進している。具体的には、平成22年度から中学校23のブロックに
  分かれて取り組んでいる。適正配置を検討するうえで、小学校と中学校の通学区域
  の不一致の現状等を踏まえ、保幼小中連携教育の推進への配慮が必要である。
  (4)特別支援教育
   学習上又は生活上に支援を必要とする児童・生徒の数が増えていることから、設
  置学級数も増加している。今後も支援を必要とする児童・生徒数が増加することが
  予測されており、適正配置を検討するうえでは、特別支援教育についての配慮が必
  要である。
  (5)学校の大規模化
   通学区域が比較的広範な学校や大規模集合住宅の建設により通学区域の人口増加
  が進んでいる学校の中には、今後も顕著な児童・生徒数の増加傾向が予測され、学
  校規模の大規模化が推測される場合がある。少人数学級が推進された場合の教室数
  不足も懸念されており、適正配置を検討するうえでは、大規模化の傾向と施設状況
  を十分に把握しておく必要がある。
  (6)大規模集合住宅の影響
   大規模集合住宅のもたらす影響は、学校施設の不足が懸念される学校に止まらず、
  小規模校に対しても及ぶ。建設により児童・生徒人口は急激に増加するものの、そ
  の後減少に転じてその影響は一時的になりやすい。期間を経て児童・生徒人口の少な
  い地域となることもある。土地の開発・利用に関する予測は難しいと思われるが、
  適正配置を検討するうえでは、可能な限り情報の把握に努め、その影響を踏まえた
  対応が必要である。
  (7)学校改築
   学校施設の老朽化に伴う改築需要については、財政負担も含めて全国的な課題と
  なっている。適正配置を検討する際には、改築や大規模改修と併せて中長期的な視
  点、とるべき手法や着手の順序等の広い視野からの検討が必要である。
8頁
  6 適正化に向けた進め方
  〇保護者や地域での検討を重視すべきである
  〇教育委員会は関係者への広報活動や情報提供を通して意識の啓発を行うことが必要
  〇学校、保護者、地域関係者は学校の規模と配置に関する問題意識を共有し、合意形成
   を図りながら課題を解消する方策の検討を進めることが重要
   区の現状として、前述した教育上望ましい規模に該当していない学校が存在してい
  る。(平成23年度は小学校53校中23校、中学校23校中13校がこれにあたる。)しか
  しながら、各学校ではそれぞれの規模に応じた教育の充実に取り組んでおり、望まし
  い規模を下回ること、あるいは上回ることが直ちに望ましくない教育環境に結びつく
  ものではない。適正規模及び適正配置に向けた進め方については、保護者や地域での
  検討を重視すべきである。教育委員会においては、より良好な教育環境を構築する観
  点で議論が進むよう、対象となる関係者への広報活動や情報提供を通して意識の啓発
  を行うことが必要である。
   また、教育上望ましい規模を外れているか否かに関わらず、全校に設置されている
  学校運営連絡協議会等を活用して学校の規模に関しての問題意識を学校、保護者、地
  域関係者が共有することが望まれる。
  (1)教育上望ましい規模を下回る場合
   平成13年答申では、「早急な対応を要する規模の学校」を6学級以下で児童・生
  徒数150人以下の学校としている。そのことにより、学校規模が下限に近づくと、
  学校統廃合に関する風評等が保護者の不安を招き、隣接校への入学を選択する率が
  高くなる傾向にあることも事実である。
   本審議会では、小規模校に該当することが、直ちに学校の規模や配置の適正化を
  実施するものではないと考えるが、望ましい規模を大きく下回る場合には、教育委
  員会、学校、保護者、地域関係者それぞれが良好な教育環境の確保に向けて早急に
  動き出す必要がある。教育委員会は、対象となる学校・地域の今後の児童・生徒数
  の推移等の状況を把握した上で、当該校の保護者や地域等への情報を的確に提供し、
  現状や将来予測の共通認識を持つことから着手するべきである。共通認識のもと、
  具体的に規模や教育課題を解消する方策について、学校及び保護者、地域関係者が
  主体となる検討の場を設け合意形成を図りながら進めていくことが必要である。一
  定の手順については教育委員会が事前に定めるべきであるが、参考として本審議会
  の考える手順のイメージを【小規模校に対する進め方(例)】(11ページ)に示した。
9頁
   また、検討にあたり教育委員会は教育環境を守るため、通学区域変更も含めたあら
  ゆる方法を検討すべきである。
   なお、特別支援学級が設置されている学校においては、通常学級人数の減少が続
  く一方で特別支援学級に在籍、通級する人数が増加している現状もある。検討の際
  には特別支援学級への配慮とともに、小集団での教育や学校生活へのニーズなど個
  別の事情があることも踏まえる必要がある。
  【特徴的なパターンに対する適正配置に関する考え方】
   審議会における事例検討の中から導き出した2つの特徴的なパターンについての
  適正配置の考え方は以下の通りである。
   ①学校が密集し小規模化が進んでいる学校を含む地域
     学校が密集していることや、1校毎の住民基本台帳上の人口が多くないことから、
    通学区域変更による規模の回復は難しいと考えられる地域である。この地域におい
    て通学区域変更を実施する場合には、状況を慎重に見極める必要がある。
     隣接する学校との統合の場合には、2つの学校を統合するのみではなく過小規模
    校を含む一定区域の中で数校を再編することも考えられる。複数校での検討の場合
    には、多くの保護者や地域に影響を及ぼすため、学校間の調整も含め教育委員会の
    的確な関与が欠かせない。
   ②望ましい規模を下回り早急な対応を要する学校
     望ましい規模を大きく下回る学校では、隣接校への入学を選択する率が高い現状
    がある。
     学級として機能しない規模となった場合には、複式学級(※注2)を避けるため
    にも、定める手順に従った対応を早急に行うべきである。早急な対応については、
    複式学級出現までの猶予時間は短いことが想定されることから、教育委員会の適切
    な関与が求められる。答申の示す保護者や地域での十分な検討が必要であるが、検
    討期間が長期化することは好ましくなく、適切な期限を定めることが望ましい。
     小規模化の急激な進行により複式学級が避けられなかった場合には、教育委員会
    は教育環境の維持のため最大限努力が求められるとともに、複式学級の早急な解消
    のため適切に対応することが必要である。
10頁
  【小規模校に対する進め方(例)】
  1 良好な教育環境のための課題共有
   ・学校、保護者、地域関係者が意見交換できる場を設ける。
   ・教育委員会は、きめ細かく情報提供及び情報収集に努める。
  2 良好な教育環境のための計画策定
  (1)教育委員会は、学校適正配置を検討する学校や地域を公表する。
  (2)学校適正配置を検討する通学区域または地域に地域代表の協議会を設置する。
    教育委員会は協議会設置について調整し、関係者との連携のもと協議会を運営する。
    協議会は、学校や保護者、地域住民等の関係者で構成される。
  (3)協議会は、教育委員会から適切な情報提供を受け、必要に応じて学校関係者や地域
    関係者などの意見を広く聞き協議する。
  (4)教育委員会は良好な教育環境のための「学校適正配置計画」策定に向け合意形成を
    得る。
  ♢学校適正配置計画策定の合意形成♢
   ①地域(児童・生徒の保護者、地域関係者)の合意形成を図る。
   ②合意形成は、十分な討議がなされることであり、協議会が中心となって行う。
    →合意形成が成された後は、教育委員会は「学校適正配置計画」を策定し、学校・
     地域と連携して学校適正配置計画を推進する。
  (2)教育上望ましい規模を上回る場合
   大規模校では、多くの児童・生徒によって学校行事や部活動などの様々な教育活
  動が活発になる一方で、学校運営や教育面の問題、普通教室の不足など施設面での
  懸念がある。区内の土地利用状況による用地確保の困難さや、板橋区の財政状況等
  の事情もあるが、抜本的に過大規模校を解消するためには、用地取得による増築や
  新校設置について教育委員会は努力すべきである。
   大規模校への対応として、児童・生徒数の的確な推移予測と学校の施設状況の把
  握が前提となる。まずは、通学区域の変更や施設状況を勘案した児童・生徒受入可
  能数の設定により解消を図り、次に教室増のための施設面の対応を検討する。その
  際、大規模改修や改築の手法や優先的に着手できるかの検討も必要になってくる。
11頁
  【特徴的なパターンに対する考え方】
   事例検討の中から導き出された特徴的なパターンに対する考え方は以下の通りで
  ある。
  ♢隣接校との距離が離れ大規模化が進んでいる地域
   通学区域の変更は通学距離が遠距離になることが考えられる。
   児童・生徒数の的確な推移予測を行い、一時的な増加の場合には増築等による教
  室数確保といった施設整備による対応を検討する。抜本的な大規模化解消としては、
  用地確保の困難さや、先行き不透明な財政状況等の事情はあるが、新校設置につい
  ても考える必要がある。また、地域全体を考えるとともに、特定の学校で教室不足
  が懸念され増築等の対応を急ぎ取り組む必要がないかの状況把握を教育委員会は怠
  ることがないようにするべきである。
  【大規模校に対する進め方(例)】
  1 良好な教育環境のための課題共有
   ・教育委員会は、きめ細かく情報提供及び情報収集に努める。
   ・学校、保護者、地域関係者の意見収集を十分に行い、必要に応じ意見交換できる
    場を設ける。
  2 良好な教育環境のための方針策定
   ①隣接校との通学区域の調整により学校規模の適正化を図る。
   ② ①の取り組みでも適正化が難しい場合及び通学区域の調整が困難な場合は、
    仮設校舎の建設や校舎改修について検討する。
   ③ ①・②により対処すると共に、さらに長期間にわたり大規模化が予測される場合は、
    増築を検討する。
   ④ ①~③により対処すると共に、さらに過大規模化が長期間にわたると予測される
    場合は新校設置の検討を行う。
  ※施設の改修や増築等については、綿密な児童・生徒の将来予測把握と長期的な改修
   ・改築計画に基づき、着実に進める必要がある。
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  7 おわりに
   本審議会は、板橋区立学校の適正規模及び適正配置の検討にあたり区立学校の現状と
  問題点を整理し、事例研究による考察も加えながら議論を進め、適正規模及び適正配置
  の基本的な考え方、具体的な方策について一定の方向を見出すことができた。本答申は
  それらを提言としてまとめたものである。
   教育委員会においては本答申を真摯に受け止め、子どもたちの「生きる力」を育成す
  る教育環境の整備・充実等について最大限努力すべきである。
   また、各学校、保護者、地域関係者は互いに胸襟を開き、未来を担う子どもたちにと
  って、より良い教育環境を実現するためにはどうすればよいかという視点に立ち、十分に検
  討をしてほしい。
   本答申がその指針となることを切に願ってやまない。
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東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会  委員名簿
氏   名 役     職 備   考
学識経験者 ◎渡部 邦雄 東京農業大学客員教授
〇坂東 文昭 (財)学校教育研究所研究部長
 角田 元良 聖徳大学人文学部教授
□大原 雅榮 板橋区人権擁護委員
区議会議員  なんば 英一 文教児童委員会委員長 23.7.4~
 河野 ゆうき 区議会会派代表 23.7.4~
 小林 公彦 区議会会派代表
 竹内 愛 区議会会派代表
 田中 やすのり 区議会会派代表 23.7.4~
 おなだか 勝 区議会会派代表・文教児童委員会委員長 22.1.13~23.7.3
 天野 久 区議会会派代表 22.1.13~23.7.3
 高沢 一基 区議会会派代表 22.7.23~23.4.30
 大田 ひろし 文教児童委員会委員長 22.1.13~22.7.22
区民委員  平塚 幸雄 板橋区町会連合会代表
 細井 昭夫 板橋区青少年健全育成地区委員会連合会代表
♢岡本 進 板橋区青少年委員会代表
 安野 弘司 青年会議所板橋委員会代表
□宮浦 晃一 小学校PTA連合会代表
□猪田 佳一 中学校PTA連合会代表 23.7.4~
□植田 康嗣 中学校PTA連合会代表 22.1.13~23.7.3
区職員  安井 賢光 板橋区副区長
□北川 容子 板橋区教育委員会教育長
教職員 区立学校 □小澤 高嗣 板橋区立赤塚小学校長 23.7.4~
□田中 秋夫 板橋区立成増ヶ丘小学校長 22.1.13~23.7.3
□小川 達夫 板橋区立板橋第五中学校長
◎会長、〇副会長・小委員会委員長、♢小委員会副委員長、□小委員会委員

3 平成24年答申の主旨

 区議会議員9名、区民委員7名を含む東京都板橋区立学校適正規模及び適正配置審議会が作成した平成24年答申は、下記の(1)ないし(4)が平成13年答申と異なる。

(1)早急な対応を要する規模

 平成13年答申は、通学区域の変更、学校の統合を早急に行う必要がある規模として、小規模校の下限を“6学級以下で児童・生徒数150人以下”と明確に示した。(平成13年答申、11頁)
 しかし、平成24年答申は、小規模校の下限を示すことにより保護者の間に学校統廃合に関する不安が生じ小規模化が一層進行するとして、小規模校の下限を示さなかった。
〔平成24年答申、9頁〕
  平成13年答申では、「早急な対応を要する規模」を6学級以下で児童・生
 徒数150人以下としている。そのことにより、学校規模が下限に近づくと、
 学校統廃合に関する風評等が保護者の不安を招き、隣接校への入学を選択する率が
 高くなる傾向にあることも事実である。

(2)教育上望ましい学校規模から外れる学校

 平成24年答申は、教育上望ましい学校規模を下記のとおり示した。
 〇 小学校 12学級から18学級(1学級あたり20人から30人)
 〇 中学校 12学級から15学級(1学級あたり30人から35人)
 ただし、教育上望ましい学校規模から外れる学校が直ちに望ましくない環境にあるとは断定できない、とした。 
〔平成24年答申、2頁〕
  答申では、教育上望ましい学校規模についても明らかにしている。これについては、
 次のことを確認しておきたい。
  現在の区立学校の中には、この望ましい規模から外れる学校が存在するが、学校の教
 育環境は様々な条件により総合的に整えられるものであり、各学校ではそれぞれの規模
 に応じた教育の充実に取り組んでいる。したがって、規模を外れることが直ちに望まし
 くない環境にあるとは断定できないということである。

(3)学校規模適正化に向けた進め方

 平成24年答申は、学校規模適正化に向けた進め方の基本方針を、下記のとおり示した。
〇 保護者や地域での検討を重視すべきである
〇 教育委員会は関係者への広報活動や情報提供を通して意識の啓発を行うことが必要
〇 学校、保護者、地域関係者は学校の規模と配置に関する問題意識を共有し、合意形成を図りながら課題を解消する方策の検討を進  めることが重要
〔平成24年答申、9頁〕
  区の現状として、前述した教育上望ましい規模に該当していない学校が存在してい
 る。(平成23年度は小学校53校中23校、中学校23校中13校がこれにあたる。)しか
 しながら、各学校ではそれぞれの規模に応じた教育の充実に取り組んでおり、望まし
 い規模を下回ること、あるいは上回ることが直ちに望ましくない教育環境に結びつく
 ものではない。適正規模及び適正配置に向けた進め方については、保護者や地域での
 検討を重視すべきである。教育委員会においては、より良好な教育環境を構築する観
 点で議論が進むよう、対象となる関係者への広報活動や情報提供を通して意識の啓発
 を行うことが必要である。
  また、教育上望ましい規模を外れているか否かに関わらず、全校に設置されている
 学校運営連絡協議会等を活用して学校の規模に関しての問題意識を学校、保護者、地
 域関係者が共有することが望まれる。

(4)学校規模適正化に向けた手順の例示

 平成24年答申は、学校規模や教育課題を解消する方策について、学校、保護者及び地域関係者が主体となる検討の場を設け合意形成を図りながら進めていくことが必要であるとして、合意形成の手順を例示した。
〔平成24年答申、11頁、12頁〕
【 小規模校に対する進め方(例)】
 1 良好な教育環境のための課題共有
  ・学校、保護者、地域関係者が意見交換できる場を設ける。
  ・教育委員会は、きめ細かく情報提供及び情報収集に努める。
 2 良好な教育環境のための計画策定
  (1) 教育委員会は、学校適正配置を検討する学校や地域を公表する。
  (2) 学校適正配置を検討する通学区域又は地域に地域代表の協議会を設置する。
    教育委員会は協議会設置について調整し、関係者との連携のもと協議会を運営する。
    協議会は、学校や保護者、地域住民等の関係者で構成される。
  (3) 協議会は、教育委員会から適切な情報提供を受け、必要に応じて学校関係者や地域
    関係者などの意見を広く聞き協議する。
  (4) 教育委員会は良好な教育環境のための「学校適正配置計画」策定に向け合意形成を
    得る。
 ♢ 学校適正配置計画策定の合意形成 ♢
  ①地域(児童・生徒の保護者、地域関係者)の合意形成を図る。
  ②合意形成は、十分な討議がなされることであり、協議会が中心となって行う。
   →合意形成が成された後は、教育委員会は「学校適正配置計画」を策定し、学校・
    地域と連携して学校適正配置計画を推進する。
【 大規模校に対する進め方(例)】
 1 良好な教育環境のための課題共有
  ・教育委員会は、きめ細かく情報提供及び情報収集に努める。
  ・学校、保護者、地域関係者の意見収集を十分に行い、必要に応じ意見交換できる場を設ける。
 2 良好な教育環境のための方針策定
  ①隣接校との通学区域の調整により学校規模の適正化を図る。
  ② ①の取り組みでも適正化が難しい場合及び通学区域の調整が困難な場合は、仮設校舎の建
    設や校舎改修について検討する。
  ③ ①・②により対処すると共に、さらに長期間にわたり大規模化が予測される場合は、増築を
    検討する。
  ④ ①~③により対処すると共に、さらに過大規模化が長期にわたると予測される場合は新校設
    置の検討を行う。
 ※ 施設の改修や増築等については、綿密な児童・生徒の将来予測把握と長期的な改修・改築計画
   に基づき、着実に進める必要がある。


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